しかし、ピッタリと嵌った指輪はその間に爪を滑り込ませる事も、石鹸の泡でさえも入り込む隙間がないと言いたげにビクともせず、ただ食い込む爪が痛いだけだった。
暫くの格闘の後、それでも抜けずに、茜は諦めて手に付いた石鹸の滑りや泡を洗い落として、台所へ戻って、母へと愚痴る。
「全然取れないよー…」
「あらそう?…でもまぁ、高校生だし怒られることはないからいいんじゃない?脚と同じように指もむくんでるのよ。明日の朝もう一回してみたら?」
「うん…そうする」
早く取りたいが、仕方ない。
その理由を母に言って手伝ってもらうわけにもいかない。
茜は諦めてリビングのソファに腰を下ろすと、テレビのチャンネルを幾つか押して、日課となっているチャンネルにすると、それをなんと思うことなく眺めていた。
台所から漂ってくる、夕飯の匂い。
現実的なものに囲まれている所為か茜は段々と罪悪感が薄らいでいくのを感じた。
*


