ワケアリ(オカルトファンタジー)





それが、つい数時間前に起こった出来事。


そして茜はもう一度意味もなく呟いた。



「どうしよう……」



それは指輪が抜けない事も含んではいたが、大半はその指輪を盗んでしまったという事実で、指輪が抜けない所為で隠すことも出来ない今の事態に対する悩みだった。


切るにしても、消防だろうか。


消防と警察は、茜の中でほぼイコールで繋がっていた。


自分の指についている指輪が、盗まれた物だと消防でわかってしまったら、警察に連れて行かれる。


茜は悶々と悩みのループから抜け出せずに、一つ溜息をついた。


そして、起き上がると二階の自室から階段を下り、一階にある台所へと向かうと、夕食の用意をしている小柄な母の背に問いかけを投げた。



「ねぇお母さん、指輪がぬけなくなったんだけど、どうやって抜けばいいかな」



「指輪?入った以上は抜けるから焦らなくて大丈夫よ、石鹸で滑り気を出すか、押し出すようにしてみなさい。皮膚がつっかえてるだけだから」



「うん、試してみる」



そういって、洗面所へと向かって、手を濡らすとプラスチックのポンプを押して、ジェル状の石鹸を手の平へと受けると、それを薬指に塗って、付け根から押し出すように、指輪を爪で押した。