店主だろうか、黒尽くめの男は紅茶を傍らに本を読んでばかりで、対して少年は棚やテーブルを拭いている。
……親子にしては歳が近すぎるだろうし、兄弟にしては似ていないし、雇っているにしても中学生ほどの少年を働かせていれば犯罪だ。
男の座っている膝ほどの段差のその奥には、生活スペースだろうか、絨毯の引かれた部屋が幾つか続き、その奥には本棚が見えた。
住んでいるの?…一緒に…?
そんな疑問を抱きながら、それでもどこも似ていない二人には違和感が残る。
そして、茜は二人を見るのを止めてこの店を見渡す。今度は防犯カメラを、探した。
しかし、天井にはそういったものは何一つなく火災報知器でさえもなかった。ただ、オレンジ色のランプに照らされた天井が、隙間に闇を貼り付けながら此方を見下ろしている。
小さく、身震い。
入ってから気付いたが、何処か妙な雰囲気のこの店に、嫌な予感がした。
その嫌な予感は莫大な現金を騙し取られるのでは、という方向へと結び付けられた。


