背後から聞こえた声に、私は思わず飛びのいて、フローリングの床に尻餅をついた。
そこには、私が寝ていた、その真横には父が買ってきてくれた人形が座っていて、口を動かすことなく、数を数えている。
『きゅーう、じゅーう』
その手には、家の果物ナイフを握り締めて楽しそうに此方へと目を向けながら一瞬の瞬きも一瞬の取り繕う笑顔も無しにただ淡々と声だけは楽しそうに、数を数えていった。
「ひっ…」
やがて事態を飲み込めた私は、転がるようにして部屋に出ると、父親の部屋へと転がり込んでいった。
「お、お父さん、お父さん!」
部屋の扉をあけて、私は呆然とした。
父の部屋に入るのは久しぶりだったが、その違和感の原因がすぐにわかった。
父が、いないのだ。
こんな真夜中に、父がベッドの中にいないなんて、おかしすぎる。
それどころか、ベッドは使われた様子がなく、置かれている置き物の一つ一つからうそ臭い、現実味のない雰囲気が漂っていた。


