段々と感覚が戻ってくる。
布団の中、その感触。抱き枕にしていたはずの枕がいつの間にか腕を離れている。
頬に当たる、枕の角。
少し乱れた髪の毛。
そして次に重たい目蓋、だるい身体、覚醒しない思考回路。
『…ごーお、…ろーく』
何処かで声がする。
酷く楽しそうなその声は、部屋の中、電気の消された中、酷く不気味に微かに響いていた。
段々と覚醒した頭が、理解していく今の現状。
誰、誰がいるの。
ドクン、ドクン、心臓が大きく脈打つ。
起きたことがばれないようにゆっくりと動いて、手を伸ばして部屋の電気のスイッチをつける。
布団をどかして、辺りを見回す。机にも、窓にもドアにも、何もない。
気のせいだろうか、その時。
『しーち、はーち…』


