『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで

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10月中旬の土曜日。
青く澄んだ空と柔らかい陽ざしが注ぐ中。

「桃子、何かあったら電話入れるのよ?」
「分かってるって」
「匠刀くん、桃子のこと、よろしくね」
「はい」
「いってきます」
「いってらっしゃい」

今日は久しぶりに匠刀とデートの日。
先月末に定期検診以外で久しぶりに受診したこともあって、母親に心配をかけているけれど。
財前先生のアドバイスもあって、ちょっとだけ前向きになれている気がする。

「今日は朝5時起きして作ったんだからね」
「中身は何?」
「それはお昼にならないと」
「……めっちゃ楽しみ」

初めて匠刀にお弁当を作った。

匠刀がうちで食事するようになって、何度か母親と一緒に作ったりしたけど。
今日は母親抜きで、1人で全部作ったのだ。

匠刀がテーマパークの入園券を用意してくれて、今日はそのテーマパークで1日デートを楽しむ予定。

お弁当が入ったバッグを持ってくれて、もう片方の手が私の手をぎゅっと握ってくれる。

「聞きたいことがあるんだけど」
「あ?」
「この間病院で、先生に何話しかけてたの?」
「……あぁ、あれか」

チラッと向けられた視線が、あからさまに逸らされた。
やっぱり、私のことを話してたんだ。

「守秘義務っていうのがあるから、聞きたいこと全部は教えて貰えなかったけど」
「……ん」
「まぁ、俺なりに知りたかったことの半分くらいは解決できた」
「何それ。……だから、先生と何を話したの?」
「守秘義務で話せません」
「匠刀は医者じゃないじゃん」
「彼氏の守秘義務だよ」
「はぁ?そんなもんあんの?」
「あるね~」
「意味わかんない」

匠刀の腕を小突いて不服を訴える。
すると、握っている手が引き寄せられた。

「俺ら、お似合いだって」
「っ…」

顔を寄せた彼が、耳元に呟いた。