『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで


話に聞いてた通り、さっぱりとした物言いの先生だ。

「空手は好きなの?」
「好きか、嫌いか聞かれたら、好きな部類ですけど。父や兄みたいに空手一筋というほどの熱量はないです」
「そうなの?」
「空手をしてるのも、桃子が体調不良になった時に素早い対応ができる方がいいかと思って、体力つけただけなんで」
「……そうなんだ」
「ずっと続けていくつもりはなくて、たぶん高校を卒業したらやめると思います」
「……」
「桃子の心臓、前より悪くなってますか?」
「おっと、その質問には答えれないな~」
「あ……」

守秘義務の壁だ。
何て質問したら、聞きたい答えが聞けるんだ?

今まで何度も聞いてみたい、知りたいと思っていたことが脳裏を物凄い速さで駆けてく。
それらを必死に手繰り寄せて。

「じゃあ、いつかは手術が必要になるのか、心臓移植したら今の生活をしなくて済むようになるのか、今は治療法がなくて、経過観察しか出来ないのか」
「……ごめんね、それらの質問は全部アウトだ」
「ですよね」
「でも、そこが一番知りたいよね」
「……そうですね」

天井を仰ぐ先生。
先生なりに言葉を探してくれているのだろう。

「じゃあ、質問変えます」
「ん?」
「俺が医師になったら、桃子の役に立ちますか?」
「えっ、医師になるつもりなの?」
「選択肢の1つに入ってます」
「君も白修館高校?」
「はい」
「じゃあ、医学部受けるなら外部受験になるね。白修館大学には医学部ないから」
「はい」
「これはあくまでも私の考えだけど、必ずしも医師になる必要はないと思うよ。ただ、桃子ちゃんの体のメカニズムとか、医学的な治療法だとかは、医師でいたらいち早くキャッチできると思う。一般の人では聞けない学会とかもあるし、急に体調不良になった時にも、心構えから少しは知識が活かせると思うし」
「……はい」