(匠刀視点)

学校行事が多い2学期。
毎日学校に通うだけでも桃子にとっては大変なのに、練習試合で俺が倒れたばかりに、桃子に辛い思いをさせてしまった。

だからあれほど、試合は観に来なくていいって言ったのに。
兄貴の彼女も来るからと、無意味に張りきっていた。

試合自体は勝てたけど、内容があまりよくない。
もっと前半にガンガン攻めて、相手の気力を奪うくらい圧倒的に差をつければよかった。

久しぶりの試合ということもあって、勘が鈍っていたというか。
様子見をしてしまったのが原因。

相手の上段蹴りをかわすことができずに、もろに喰らってしまった。

練習試合を終え、桃子のスマホに連絡を入れても音信不通。
いつもながらに、この繋がらない時間が地獄で。
桃子がどうにかなるんじゃないかと、半狂乱状態に陥ってしまう。

自宅に行ってみても、まだ病院から戻ってないと分かり、いてもたってもいられなくて大学病院へと向かった。

日曜日ということもあって、受診するなら時間外対応の救急外来にかかっていると知っているから。
救急外来用の入口から中に入った所で、桃子の母親を見つけた。

「おばさんっ」
「家に来てくれたんだって?今家に電話したらそう言ってたから」
「……すみません、俺のせいで」
「匠刀くんのせいじゃないわよ。自己管理できないあの子のせいだから」
「それは違うかと…」
「もう検査も診察も終わって、今は点滴してるわよ、桃子」
「大丈夫なんですか?」
「えぇ。ちょっと驚いて不整脈になっただけみたい」
「そうですか」

桃子の母親と一緒に、桃子の元へと向かう。