『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで



「お母さん、ごめんね。心配かけて」
「……無事ならそれでいいのよ」

学校に迎えに来てくれた母親に付き添われ、救急外来でかかりつけの白星会医科大学を受診した。

極度のストレスによる不整脈と診断された。

右心不全とは右心室の機能低下を示すが、右心室自体は機能している桃子。
桃子の場合、右心房の一部が心筋炎によって破壊されたため、右心室に負担をかけている状態。
だから、完全に右心不全というわけではない。
それが唯一の救いだ。

たまたま当直でいた主治医の財前先生が診察してくれて、桃子は精神安定剤(輸液)を受けている。

「桃子、お父さんに電話入れて来るわね」
「……ん」

CTや心エコー、採血など一通りの検査をして、心臓自体に問題は無かった。

「桃子ちゃん、気分はどう?」
「……だいぶ良くなりました」

スクラブ着の上に白衣を纏った財前先生。
三十代だと前に教わったけれど、すごく美人で優しい先生。

「先生」
「ん?」
「変なこと、聞いてもいいですか?」
「えっ、どんな事だろう?」

点滴のクレンメを調節し終えた先生が、優しい眼差しを向けてくれた。

「彼氏がいるんですけど、今の状態だと、彼との将来は望めないですか?」
「おっ、かなり難しい質問だね」

難しいんだ、やっぱり。

「そうだよね。そういうお年頃だもんね。検診の時じゃ、お母さんも一緒で聞きづらいよね」
「……はい」

今まで彼氏ができると思ってなかったら、考えもしなかったけど。
匠刀と付き合うようになって、少しずつ考えるようになった。

「まだ高校1年だったよね」
「……はい」
「彼とは交際が長いの?……いや、違うか。期間の問題じゃないよね。何て言うのかな……」
「先生、大丈夫ですよ。ちゃんと受け止めれるので、はっきり言って下さい」
「……そうね、濁してもダメよね」