「ッ?!匠刀っ」
俺の声に気付いた桃子が振り返った。
「えっ、彼氏がいたんだ」
「いちゃ悪い?桃子、浮気か?」
「違うよっ」
何、こいつ。
あからさまに俺への敵対心向けて来やがる。
「悪いけど、こいつに手出そうとか思ってんなら諦めて。こっちは10年もこいつだけを想って来てるんで。……帰るぞ」
「……うん」
「あ、悪い。その傘返して。代わりにこの傘やるから」
「へ?」
男の手から桃子の傘を奪い返して、自分の傘を突き付ける。
気安く桃子の物に触れんじゃねーよ。
っつーか、話しかけんな。
「要らなかったら捨てていいから」
桃子の手を掴んで、俺らを見ている奴らの間を避けて歩く。
「俺にくっついてろ」
「……ん」
桃子の折り畳み傘を広げて、桃子の肩を抱き寄せる。
できるだけ雨に濡れずに済むように。
水たまりのない所を選んで駅へと向かっていると。
「匠刀、怒ってる?」
「怒ってねーよ」
「ホント?」
「ん」
実際、桃子に対して怒ってるわけじゃない。
気分がいいとも言えないが、こんな可愛い彼女をもったら、少なからず周りの男に対して嫉妬心を抱くのは想定内。
「メールで言ってた、友達に誘われたって、奴のことだろ?」
「……ん」
結構な雨足でも、走ることができない。
桃子の体が濡れないように傘を少し傾けながら駅を目指す。
*
駅のコンコース内で、桃子の体をタオルで拭く。
「もう大丈夫だよ。匠刀の方が濡れてるじゃん」
「俺は平気だって」
華奢な手が、俺の髪に伸びて来る。
濡れているのを気にしているようだ。
「なぁ」
「ん?」
「勝手に断ったけど、男友達欲しいか?」
「へ?」



