『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで



「はぁ~助かったぁ…」

運よく午後の講義を知らせる予鈴が鳴ったこともあり、『トイレに寄るから』とその場から逃げられた。
とはいえ、同じ塾に通っていたら、当然またどこかで会うのだろうけど。

学校帰りに制服のまま塾に通っていたから、バレたんだ。

北棟と南棟では制服が違うけれど、同じ学校章のワッペンがブレザーに付いてるから。

慌てて駆け込んだトイレで、匠刀にメールを打つ。

『N校男子から、友達になって欲しいと声かけられた』
『予鈴がなったから、その場から逃げれたけど』
『まだ、ちゃんと断れてない』
『どうしよう』
『彼氏がいるからって、ちゃんと伝えないとだよね?』

匠刀の返答なんて大体察しが付く。
『無視しろ』『相手にするな』『彼氏がいると言え』

分かってはいるんだけど、今はその言葉が欲しい。


友達付き合いというもの自体が殆どない桃子は、女の子特有の会話が苦手だ。
素子や匠刀はその点も分かってるから、気を遣わないで済むけど。

桃子の性格を全く知らない子たちから、『何考えてるか、分からない』『品定めされてるみたいで気分悪い』と言われたこともある。

それに、友達同士で出掛ける場所にも制限がある。
映画館やライブといった場所は難しいし、遊園地も楽しめる遊具が極端に少ない。

だから余計に友達つくりから遠ざかって、無理につくろうとして来なかった。

匠刀から返信が来ない。
午後の稽古が始まってるんだろう。

もとちゃんにも入れておこう。
何かアドバイス貰えるかもしれないし。

桃子はトイレの個室で急いで素子宛てにメールを送った。