あっという間に7月に入り、夏休みがすぐそこまで来ている。

「モモ、夏休み中の塾って週何日?」
「3日」
「それ以外は、家の手伝い?」
「そのつもりだけど」

あの日以来、匠刀と直接話をしていない。
本気で殴るとは思ってなかったし、どうせデコピンとか、頭グリグリされるくらいかと思っていたら。
まさかまさかの、キスって。

そんな素振り、見せたこと一度も無かったのに。

いや、あったのかな?
さり気ない優しさはいつも感じてた。

ただ単に幼馴染で、私が他の子より体が少し弱いからだと思ってたけど。

もしかして、私のことを好きでしてたのかな?

「……――……って、ねぇ、モモ、聞いてる?」
「あ、ごめん。考えごとしてた」
「最近、変だよ?」

音楽の授業のため、音楽室に向かいながら親友のもとちゃんをじーっと見つめる。

「何?……相談事?」
「もとちゃん、キスしたことある?」
「へっ?!……って、まさか、幼馴染くんとしたの?」
「……ん、この間」
「で、で。どうだったの?よかった?」
「いいか悪いかなんて分かんないよ。不意打ちだったし」
「えぇ~っ、それでもあるでしょ、なんかこう……ドキドキとかきゅんとか」
「……」

ドキドキ?
きゅん??

いたたまれない空気と、後味悪い空気感しかなかった気がするけど。

いつも飄々としてるあいつが、『しまった』みたいな顔をしたのは憶えてる。
それに、『ごめん』とぼそっと呟いたのもちゃんと憶えてる。

あぁ、悪ノリでしたのに、間違えた選択したんだろうな、的なやつ。