「遅ぇーよ、匠刀」
「あ、今、『お前も一緒かよ』って思っただろ」
「思ってないよっ」
「いや、思ったね」
「……」
ホントは一瞬思ったけどね。
だって、虎太くんと休みの日に会えるなんて、奇跡に近いもん。
それが、こいつがいるだけで台無しだ。
「彼女は?」
「電車が遅れてるらしくて、少し待っててって」
「あっそ」
「匠刀、待ってる間にモモちゃんの荷物、運んでやって」
「は?俺が?」
「店は分かってるんだから、向こうで合流すればいいだろ」
何のことだか分からないが、この後に彼女さんと合流するということは分かった。
「桃子、ケーキ食う?」
「え?」
「お前、甘いの好きだろ」
「……嫌いじゃないけど」
「兄貴、確か4人までじゃなかった?」
「そうだっけ?」
お財布からチケットのようなものを取り出した虎太くんは、匠刀にうんうんと頷いてみせた。
「じゃあ、これ運んだら桃子と向かうから、現地集合で」
「おぅ、分かった」
「……匠刀?」
「行きながら話す」
私の手からスリッパが入った紙手提げを取り上げ、匠刀は軽々と持つ。
「お前にしちゃあ、頑張って持ってたじゃん」
「一言余計だよっ」
虎太くんと駅で別れ、匠刀と自宅へと向かう。
「虎太くんと用があったんじゃない?」
「あ?……ん~まぁな」
手に食い込むほどに重かった荷物がなくなり、その部分がジンジンと痛む。
「兄貴の彼女がさ、俺と仲良くなりたいらしくて。そんで、ケーキバイキングに誘われたってわけ」
「匠刀甘いの苦手じゃん」
「……向こうの気遣いなのに、食えねぇとは言えねぇだろ」



