そういえば、あいつは昔から勘が鋭い。
走ってもいないのに心臓が痛くて息苦しい時も、急に眩暈がする時も、なぜか匠刀は一番最初に気づいてくれる。
小中高と一緒だというのもある。
私に友達が殆どいないのも知っているから、声をかけてくれるのだろうが。
「ココアってさ、生理の時に飲むといいってよく言うじゃん」
「えっ、そうなの？」
「体を温める効能があるから、うちの母親は私が生理になるとよく淹れてくれるよ」
「……」
うちは鍼灸・整体院だから、生理の時は母親が鍼を打ってくれる。
カイロを貼ったり、生理薬を服用したりはするけれど、ココアがいいだなんて初耳だ。
けれど、さすがに私に生理がが来てるだなんて、分からないと思うけど…。
「もとちゃん」
「ん？」
「私、匂う？」
「え？」
「（生理が来てるって分かる匂いがする？）どう？」
「さすがにそれはないよ」
「本当？」
廊下で男子とすれ違い、慌てて口パクで会話する。
自分では匂う気がするけれど、じゃなかったらどうやって分かるの？
「あいつ宇宙人だから、透視能力が使えるのかも」
「フフフッ、何それ」
「だって、他に考えられないでしょ」
「普通に、モモが保健室に行ったのを見たのかもよ？」
「……あ」
そう言えば、保健室から外で体育をしているあいつと目が合ったっけ。
胸が苦しくなったりすれば、早退すると分かってるし。
眩暈や頭痛で保健室に行ったのなら、私はそのまま2時間くらいは寝るコースだ。
お昼休みにテラスにいたことで、消去法で答えを導き出したのかもしれない。
「やっぱりあいつは、宇宙人だ」
明日あたりに施術しに来るだろうから、あいつの好きなバイク雑誌でも買っといてやるか。
