あなたの仮面の下にあったのは

口にすることのない食材を買いに行った帰り、橋の真ん中で立ち止まり、香奈はふと思った。香奈のすぐ傍を、元気な小学生が笑いながら走って行く。あの日から、香奈はずっと笑っていない。

(ここから飛び降りたら、楽になれる?もう苦しまなくていい?誰からも責められない?)

食材の入ったエコバッグを落とし、香奈は橋の欄干に手をかけた。その時である。

「何してるんですか!」

男性の大きな声と共に、香奈の体に腕が回される。欄干から引き離され、香奈は男性の腕の中で暴れた。

「離して!!もう生きていても意味がない!!誰も私を信じてくれないの!!不倫なんてしたくてしたわけじゃないのに!!」

「なら、僕を信じてください!!僕があなたの力になります!!」

香奈よりも大きな声で男性は言う。通常の精神ならば、見ず知らずの男性に抱き締められてそのようなことを言われても警戒するだけだろう。しかし、弱りきった心は警戒という壁を築くことはなく、いとも簡単に男性を受け入れてしまった。