それにしてはリアルで、ナイフを握りしめていたときの手のひらはまだ汗で湿っている。
ふと視線を部屋の中へ向けてみると、昨日寝たときとかわっているところがあった。

勉強机の椅子に引っ掛けられた制服だ。
奈穂は毎日ハンガーに吊るしてクローゼットにいれているから、こんなところにあるはずがない。

そっと近づいて確認してみると、紺色のスカートがホコリまみれになっていることに気がついた。


「なにこれ」


呟き、慌ててホコリを手で払う。
そして気がついた。

教室内から脱出しようとしたときあれだけ動き回ったら、これくらいのホコリがついてもおかしくないと。
そう気がついた瞬間、奈穂の背筋は冷たくなったのだった。