箱の大きさなどの関係もあり、後ろから私を抱きすくめる体勢になったギャビンは、耳の辺りで囁くように言った。

「お願い。今はジョルジュに見つかると、色々面倒なんです。また、説明しますから……」

 小声で返した私は自分たち二人が、狭い空間の箱の中でとんでもない体勢になってしまっていることに気がついた。

「ごめん……これは、わざとじゃない」

「大丈夫。わかっています。ギャビン殿下は、そんな人ではないですから」

 後ろから抱きすくめるようになっているギャビンの腕は私の体の前に回されていて、狭い箱の大きさの関係上、彼の手は胸の上に手があった。

 これは……完全に不可抗力。ギャビンはだから、さっき私に待って欲しいって言ったんだ……。

「本当に……ごめん。ただの、生理現象だから」

 私は耳元で囁く恥ずかしそうなギャビンが何を言いたいのかを察し、慌てて妙な慰めを口走ってしまった。

「きっ……気にしないでください! よっ……良くありますよ」

 良くは、ないよ!! こんな状況、日常では絶対良くはないよ!!

 ……何言ってんの。本当に馬鹿じゃないの。ううん。その通りなの。

 良くわかってる。にっちもさっちもいかない、良く分からないこんな状況にしてしまった馬鹿はこの私だった。