私はギャビンの衣装部屋の中にあった、大きな宝箱のような物入れに目をつけた。まさかこんな箱の中に、王子様と私が入っているなんて誰も思わないはずだ。

 もし、強引なジョルジュが入って来ても、この箱の中を確認したりはしないだろう。

 ギャビンに色々と説明している暇はないし、彼に黙っていて欲しいと頼んで聞いてくれる保証はない。

 一刻も早く乙女ゲームの好感度に振り回されている三人の好感度を元の状態に戻すために、黒うさぎのトリスタンに会わなきゃいけないのに!

「えっ? レイラ?」

 何も言わずに私にされるがままだったギャビンも、自ら狭い箱の中へ入った私に手招きをされて困惑していた。

 よくよく考えなくても、王子様は箱の中に入って隠れたりしないと思う。必要ないし。

 ガチャっと開いた蝶番の音に、私は小声で言った。

「ギャビン。良いから、入ってください!」

「っ……ちょっと待って。レイラっ……」

 私はギャビンが慌てているのも聞かずに、箱の蓋を下ろした。

「これは、どういうことなの? レイラ」