出来るだけ素っ気なくそう言った私に、ギャビンは整った顔を歪めた。

「どうやら、レイラは僕の手紙を読んで、その話をしにここまで来てくれたと言う訳では……なさそうだね」

 王族への最高の敬意を表す礼をした私を見て、ギャビンは寂しそうに笑った。

「ええ。申し訳ありません。私。実は今急いでいるんです! 話なら、別の機会にしてください」

 さっき廊下で私を探していたらしいジョルジュも、今では姿が見えない遠くに行っているはずだと思い扉を開こうとしたら、ギャビンが駆け寄って手を引いた。

「待ってくれ。レイラ……僕が悪かった。あの時は誰かに操られるようにして、おかしくなっていたんだ。婚約者の君から心変わりをして、何の段階も踏まずに別の女性を傍に置けば君が怒るのは当然だ。僕が、おかしかったんだ。悪かった。どうか、許して欲しい……」

 ついこの前まで、ヒロインクロエを好きだ愛していると恥ずかしげもなく口にしていたギャビンは、どうやら今は婚約解消した私のことを本当に好きになってしまっているらしい。