私がいつもと違う様子であることを察した彼は、貴族が通常使う門ではなく、城で働く人たちが使用する裏門を提案した。今は夕方で、開いている門は少ない。彼の提案に頷くべきだ。

「良いわ。出来るだけ、早くしてちょうだい」

 御者もいつになく急いでいる様子を見せる私につられてしまったのか、焦ったようにして馬を急がせた。

 何でこんなところから入るんだと言わんばかりに驚いた顔の使用人たちに対し、にこやかに微笑みながら、私は裏門より城へと入った。

 ヒロインクロエと違って、私は国民からは特に愛されてはいない。

 けれど、第二王子から婚約解消されたとは言え、何か致命的なトラブルなどもない。だから、どう対応して良いかわからずに、扱いづらいと思われているのかもしれない。

「……秘密の花園って、確かギャビン殿下の部屋の近くよね……」

 城の廊下を歩いている時に、嫌なことに気がついてしまった。

 確かに彼は乙女ゲームでのお気に入りではあったけど、婚約解消を申し入れて来た元婚約者に会いたいなんてとても思えない。