鬼の生贄になったはずが、溺愛されています

こんなことになるからもう少し洞窟で待っていればよかった。
後悔が脳裏をよぎったとき、ガサガサッと臭きが揺れる音が聞こえてきてハナは足を止めた。


「光鬼?」


返事はない。
草木の間から黄色く光る2つの目が見えた。


「ヒッ!」


野生動物だ!
背中に一気に汗が吹き出して来て体が震える。

動物の2つの目はジッとハナを捉えて離さない。
こういうときはどうすればいいんだっけ。

動物から視線を離さずに後退していくんだっけ。
両親から聞いたことのあるはずの対処方が頭の中でグルグルと回って正解がわからない。

パニック状態で立ち尽くした時、動物のうめき声が聞こえてきた。
それとほぼ同時に地面を蹴り上げてこちらへ向かてジャンプする。


「いやっ!」


咄嗟にかがみ込んで両手で頭をかばう。
しかし、いつまで待っても獣がハナに襲いかかってくることはなかった。

そっと目を開けてみるとハナの目の前には光鬼が立っていた。