鬼の生贄になったはずが、溺愛されています

☆☆☆

なにかおかしなことを言ってしまっただろうか。
2時間してもなかなか戻ってこない光鬼にハナは焦りを感じ始めていた。

今まで生活がうまく行っていたのに、私があんなことを言ってしまったから戻ってこなくなったんだろうか。
洞窟の前を何度も行ったり来たりして光鬼の戻りを待つ。

それでも光鬼はなかなか戻ってこなくて、ハナは夕飯の準備を始めた。
普段ならほんの1時間ほどで沢山の魚を取って戻ってくる光鬼だ。

今日はなにかがあったに違いない。
火の番をしながら光鬼の帰りをそわそわとした気持ちで待ち続けた。

しかし料理ができても、火が弱まって火種だけになってしまっても、光鬼は戻ってこなかった。
洞窟の外はすでに暗闇に包まれていて、ハナの目では2メートル先を見渡すことができなくなっていた。


「どうしたの光鬼……」


不安に押しつぶされそうになったハナの口からは光鬼を思っての言葉が漏れ出す。
耳を済ませてみると夜になって起き出してきた獣たちの声も聞こえてくる。

日中聞こえてきていた小鳥のさえずりはとっくに鳴りを潜めていて、すっかり夜の気配が漂っている。