鬼の生贄になったはずが、溺愛されています

光鬼は茶碗を脇においてハナの体を引き寄せた。
そのまま自分の膝の上にハナを乗せると、細くて壊れてしまいそうなあやうさを感じる。

両手で力を入れて抱きしめたら、ハナはどうなってしまうのだろう。
人間は、特にハナのように若くて華奢な女はか弱すぎて恐怖心を感じてしまう。


「でも、私は生贄としての使命を果たせていません。ちゃんと、そのように扱ってもらわないと……」


そう言うハナはすでに泣き止んでいて、頬を赤く染めていた。
ハナの言う意味がようやく理解できた光鬼は大きく目を見開いた。

そしてつらそうに眉を寄せると、そっとハナを地面におろした。


「新しい魚を取ってくる」


光鬼はハナの顔を見ずにそう告げると、洞窟から出ていったのだった。