鬼の生贄になったはずが、溺愛されています

相手は鬼なのに、なにを考えているの?
自分の不潔な考えをかき消すように光鬼から視線をそらせる。


「でも、私は生贄としての使命を果たせていないから、せめて家事くらいしないと」

「使命?」


光鬼が驚いた様子で目を丸くする。


「村の人達は私が鬼に殺されていると思っているはず。そうじゃなくても、どこかへ連れ去られて、好きにされていたりとか……」

「それを望むのか?」


聞かれてハナはうつむいた。
そんなことを望む人間はきっといない。

だけど自分は今こうして光鬼とただ生活をしていくだけのことに疑問を感じていることも確かだった。


「お願いです!」


突然両手を地面について頭を下げるハナに光鬼は腰を浮かせそうになった。


「私を捨てないでください! 村からも捨て得られて、あなたにまで捨てられたら、私……!」


頭を下げているハナの頬に透明な涙が伝っていく。


「捨てるなんて、そんなこと誰も言ってないだろう?」