やがて複数の足音がハナから遠ざかっていくのが聞こえてきた。
しばらくぼんやりとしてそれを聞いていたハナだったが、ハッと我に返り樽の蓋に手を押し当てた。

蓋は相変わらずしかりと閉じられていて、ハナの力ではびくともしない。


「待って! みんな、待って!」


声を上げるものの、すでにかすれて喉が痛いばかりだ。


「お願い助けて! 私なんでもする! 村の役に立つから!」


ハナの声は虚しく消えていくばかりで誰の耳にも届くことはなかったのだった。