だから、
〝期待するな!〟とか言われる方が無理で。



晴くんの、
服の裾を掴んで、顔をジッと見つめると。



「桜乃。それ、わざとか知らねーけどさ、
〝期待〟していーよ。俺、桜乃が好きだから」



直球に降って来たのは、そんな言葉で。



「............んっ、」



気づけば、至近距離に、
晴くんの顔のドアップがあって。



瞬く間に、塞がれたくちびる。



その初めての温もりは、
──────甘い栗の香りがした。



.....................って、〝何か〟忘れてるような?



くちびるが離れて、
ドアップのままの晴くんの目の前。



「あっ、あーーーっ!晴くん!学校!」



私は、そう叫んでしまった。



目の前にいた晴くんは、
私に聞こえないぐらい小さな声量で。



「............ふっ、ムード、ぶち壊し、」



そう言って、笑ってたことを、
──────私は全く知らない。