それを、彼自身がわかっていないはずなんて、ないのに。

「貴方のせいではないわ……クイン。ごめんなさい」

 私はベッドの近くに居る彼の小さな体を抱きしめると、泣いているクインは抱き返しながら言った。

「姉上のせいでもないよ……全部が全部、この悪い状況の何もかもが、自分のせいだなんて、絶対に思わないでよ」

 何もかもその手に持ち幸せに見えるギャレット様なら、少しなら傷つけても良いと思ったのは確かだ。自分の責任ではなく不幸せな私たちには、きっとその権利があるはずだと。

 けれど、これから一国の王という重責背負うことになる王太子の彼の気持ちを、国民のだれかは考えたことはあるのだろうか。

 愛する相手も自分で選ぶことも出来ず、公には常に冷静な立場を崩せない。

 そうだ。誰もが彼の本音なんて、望んでない。だって、一生国民のために見世物のようにして過ごす人の気持ちなんて、聞きたくない。

 ただその血筋に生まれたというだけで、国の平和のために犠牲になる人のことなんて、何も知りたくない。

 私は以前、イーサンに偉そうに言ったはずだ。どんなに人に羨まれるような立場に居たとしても、その人なりの悩みや苦しみは絶えないのだと。

 あの……儚げな笑顔。

 あれを初めて見たその時から、ギャレット様が彼を見て誰もが思うような完璧な王子様でないことを、私は知っていたはずなのに。