「僕は要らないって言ったはずだよ。侯爵位なんて、要らないんだって。母上が亡くなってあの男が、おかしくなり……たった一人しか居ない姉上をこんなにまで悲しませて、欲しい物なんて僕にあるはずもないよ。姉上は僕を何もわかっていない子ども扱いするけど……わかってないのは、姉上だよ。人の話を聞かずに、自分が一番正しいと決めつけて、自分さえ不幸になればそれで良いと思っている」

 両手をギュッと握りしめて、泣きながらクインは私に怒っていた。

 彼の話をこうして聞けば、そうなるのも当たり前だ。お前は何も言わずにただこれを受け取れと、自分自身を犠牲にしたものを望んでもいないのにそう言われた。

 その重さにただ絶望して、こうして泣いている。

「ごめんなさい。クイン」

「謝らないでよ……姉上。僕がすぐに、侯爵になれたら良かったんだ。もっと早くに生まれていれば、こんなことにならずに済んだんだ。僕がもし、成人だったら」

 私はクインが涙ながらに口にした言葉に、私はこれまでに考えていたことを思い出した。もし、クインが侯爵にすぐなれればと私は思ったはず。