イーサンはきっと、王妃様の企みもどうでも良いのだろう。ここで男爵位を貰えなくても、いずれどうとでもなると思っている。彼にはそれだけの実力があるから。

 私には、何もない。

「……私は父や弟を自分のために、踏みつけにすることはありえません」

「そう? まあ、俺は別にどっちでも良いけどね」

 イーサンはそう言い残して、去って行った。

 庭園の中は花盛りで、もうすぐ冷たい冬がやって来る。私は心を凍らせて、自分に与えられている役目を果たす。

 家族だけのためでもない。何よりも、自分が助かるために。