ここで、何を言えるだろうか。私は彼のことを、何も知らないのに。いいえ。知ろうともしていなかったのに。

 ただ、婚約者になった私を大事にしてくれただけなのに。

「無理もない。俺も、君が返答に困ることを言ってしまった。さあ、行こう」

 そして、ギャレット様はゆっくり進むしかない私の歩幅に合わせて、いつものようにぎこちなく歩いた。

 優しい。嬉しい。けど、胸が締め付けられるように苦しい。

 だって、この人は絶対に好きになってはいけない人だった。