だって、ペルセフォネ嬢はただ単にギャレット様のことを好きだから、やたらと妬いているし、彼と結婚したいと望んでいるんだと思う。

「宮廷での派閥争いなど、聞いてあまり楽しい話でもない。俺が即位すれば黙るしかないだろうが、それまでは不毛な争いは続くことになる」

「ギャレット様は、早く王になりたいですか……?」

 何気なく聞いた私はその時に見たギャレット様の表情を、きっと忘れられないと思う。彼には似合わない儚げな笑みを浮かべた後で、いつもの笑顔で言った。

「……王になりたいかと言えば、なりたくはない。だが、それを他の誰にも言える訳もない。だから、これは俺とローレン二人の秘密だ」

「ギャレット様……」

「俺は自分では、剣で身を立てて生きていく方が向いているように思う。だが、血筋でしか納得出来ぬ人間が居ることも知っている。だから、俺がなる」

 私はそれを聞いて何も言えずに、二人の間には沈黙が落ちた。

 ここでどんな慰めを言えるだろうか、一国の王となる彼の背負っている重圧なんて、私がわかってあげられるはずもないのに。

「ごめんなさい……何も、上手く言えなくて……」