けれど、ギャレット様は自分のことを口では好きだと言いつつ、やたらと距離を取りたがる私のことを逆に気になってしまっているようだ。

 ベルセフォネ様たってのご希望が、完全に逆効果になってしまっている。けれど、私がそれを言っても彼女は怒るだけだろう。

 一日に時間があれば何回か彼に会いに行くことも、すべて王妃様の指示通りだ。そこに、私の意志はなかった。婚約者になれた理由により、対外的にはそう見えるように敢えてそうしている。

 何故、私がギャレット様を慕って、彼との結婚を強く望んでいるという理由で婚約者になれたかと言うと、とても悲しい現実ながら、それ以外に私に売りとなる要素が何もないからだ。

 幸い農業が盛んな肥沃な大地を持つ領地からの定期的な税収入は見込めるものの、それは殆どが今ある借金の返済に流れる。近しい親族には、縁を切られている。浪費家の父は酒浸りでこれからも働く気がゼロだし、跡継ぎとなる弟はまだ幼い。

 王妃も私をとりあえず一時的な王太子の婚約者に据えておくことにしたけれど、彼女だって頭を悩ませたはずだ。