それもこれも、亡き祖父と父が上手く国の舵取りをしてくれてたからだ。外交には特に力を入れ交渉上手だから、戦争もなく長く平和が続いていた。

 その代わり、平和ボケした貴族連中が国内で問題を起こすことも多い。前王妃派と現王妃派だ。つまり、王太子の俺と第二王子たる弟のアイゼアの代理戦争なようなものだ。ちなみに俺もアイゼアも、それをまったく望んではいない。父を困らせているのは、国外からの問題より彼らの方が比率が多いくらいだ。

 だからこそ、父親が貴族としての役目を果たしていないローレンが、俺の婚約者として選ばれたのかもしれない。彼女であるならば、俺の結婚に関してはどちらの陣営にも影響しない。

「義母上も自身の権力が強まることを、恐れているのではないか。宮廷での派閥争いは、熾烈になるばかり。そういった強硬手段を取れば、母の実家バルレッタ家も黙っていまい」

「ははは。あの欲深い女が、そんなしおらしく考えるかね? だと、良いけどねえ……」

 ガレスは俺の母に代わり、王妃の座に就いた元側妃の義理の母に対し不満があるようだ。父も亡き母を、愛していたように思う。