「……そうか。俺が早とちりをして、妙な誤解をしてしまったようだ。ベッドフォード、悪かった。ローレンが世話になった……手を。俺が君の部屋へと連れていこう」

 ギャレット様は何をするつもりなのかと戸惑う私をふわりと抱き上げ、なんなく横抱きにすると迷いなく廊下を歩き出した。

「わっ……重くないですか?」

「羽根のように軽い。ローレンは、本当に食べ物を食べているのか」

 私は角を曲がる直前に置いてけぼりになってしまったイーサンを見れば、彼は肩をすくめて苦笑いしていた。

 ヒヤッとしたけど、上手く切り抜けられた。

 ギャレット様が居る場所で、イーサンは何をするつもりなのかしら。世界でも有数の商人と呼ばれるまでにのし上がり、巨万の富を手に入れた彼だって、本来なら手に入らないはずの爵位は手にしたいはずだ。

 いいえ。こういった危ういスリルを楽しんでいるのかもしれない。ギャンブル好きな噂だってある。嫌な男だもの。

 気まぐれには、私を巻き込まないで欲しい。

「……ええ。人並みには」

 戦闘着より着替えていたギャレット様は先ほど戦って体を動かしていたので、少しだけ汗の匂いがした。