白い石畳で出来た廊下を、重いドレスや歩幅の関係でゆっくりと進むしかない私に、長い足をぎこちなく動かしてギャレット様は歩みの速さを合わせてくれていた。

 私たちは正式な婚約者同士だし、安全な城の中のせいか、周囲の侍女や護衛などは気を使って話が聞こえないように一定の距離を空けていた。

 ちらちらとこちらへ視線を投げるギャレット様は黙って寄り添う私に、何かを伝えたいようだ。

 ……なんだか、嫌な予感がする。

「ローレン。何故君が……俺の婚約者となった理由を、覚えているか?」

 やっとギャレット王子から口火を切り真剣な声音で問われた疑問に、私は黙ったまま微笑み頷いた。

 その理由を忘れることなんて……私には一生、出来ないと思います。

「はい。ギャレット様を以前よりお慕いしておりましたので、私が婚約したいと自ら立候補いたしました」