俺だってここまでのめり込んでいる存在のローレンが裏切れば、きっと正気ではいられない。

 だから、元王妃アニータの罪は人は皆、あまり直視はしたがらないのかもしれない。誰だって罪を犯すし、誰だって裏切られれば人を恨む。

 それはもう、どうしようもないことなのだから。

「おい……ギャレット。いい加減にしたらどうだ」

「え? ……あ。悪い。考え事をしていた。ガレス。何を話していたんだ?」

 背の高いガレスは庭園のベンチに座り、ぼんやりとしていた俺を見下ろして嫌な顔をしていた。

「いや、お前の結婚式についてだ。王太子の結婚式だぞ」

「……何か、問題があったのか?」

「だから、一年はせめて準備期間を取れと言ったんだ。付き合いのある各国の国賓を招くし、先方の予定もある。色々あって急いでいるのはわかるが、自分の立場を考えろ」

 いつものガレスの説教が始まったので、俺は立ち上がり歩き始めた。ガレスは口うるさくいってくれるが、それが俺にとっては救いでもあった。