あの子を助けてと言いたかった私を落ち着かせるようにして、彼は背中を撫でた。

「クインも裏の馬車に乗せられそうになっていたところを、既に保護済だ。だから、もう大丈夫だ」

 さっきまでもう究極の二択を選ぶしかない私にとって、一瞬で地獄から天国へと移された気分だった。

 あまりの状況の変わりように、対応仕切れなくてくらくらと目眩が起きそう。クインが保護されて、私がギャレット様の腕の中なら、もう何の問題もない。

 助かったんだ。嘘みたい。

 元婚約者を捨ててお母様に走った過去のお父様の所業については、正直娘の私だとしても自業自得だと思ってしまうから、もう割愛させてもらう。

「でっ……でもですね! どうして、ここがわかったんですか?」

 ギャレット様は私が居るなら用は済んだとばかりに、さっき私たちが居た民家に背を向けて颯爽と歩き出した。