この人に、今何を言えるだろうか。

 だって、思い通りに動くはずのない他人の行動を恨み、それを二十年近くも恨み続けるなんて。そんなこと、普通の人間は思わない。

 人の不幸を願って生きるよりも、自分の幸せを考える方が良いなんて、勝手な誰かは言うかもしれない。

 私だって、そう思う。だって、お父様は彼女ともう一度結婚したいなんて、絶対に思わないはず。

 王妃が幸せだった時間やその時に思い描いた未来は、二度と戻らないのに。何の意味もないとわかりつつ、今まで生きて来たのだ。

 狂気を孕んだ眼差しを向け、無言のままの私を見て興味なさそうに肩を竦めた。

「ただ、若い頃男に裏切られて、気のおさまらない私のために、ローレンに不幸になって欲しいだけなのよ。恨むなら……私を不幸にした両親を、恨んでちょうだい」



 もう……ここで自分は、終わりだって思った。