「私はね。フィリップに捨てられて、本当に不幸になったから。ねえ。ローレン……貴女は、母親にそっくりね。正しくて、優しくて、誰からも好かれて……妬ましい。貴女は、本当に何も悪くないのよ。けど、両親が私に酷いことをしたの。大好きな人と引き裂かれて、外国に売られるのよ。きっと、ギャレットを忘れられないでしょうね……一生……可哀想」

 詠うように言った王妃は、私を見ていたけど……見ていなかった。きっと、似ている母をそこに見ているのだ。彼女から婚約者を奪った……殺したいくらいに憎い女。

 ギャレット様と私を両思いにさせるのは、彼女には簡単だったはずだ。

 ギャレット様は通常の女の子なら、すぐに好きになってしまうくらいに魅力的な人だし……自分の責任ではなく不幸だった私を、彼は気にしてくれて、そして、思惑通りに好きになってくれた。

 すべて、王妃アニータの思い通りに進み、今は最終の仕上げにかかろうとしていた。

 ギャレット様は、私を絶対に裏切らない。

 だから、私を二度と戻れぬ外国に追いやり、両思いの二人はお互いを忘れられないままで、ずっとずっと不幸になる。