「ローレン。久しぶりね」

 私はクインの反対側に居た人を見て、やはり彼女だったと思った。

 だって、動機はいざ知らず、こんなことが可能なのは、彼女しか居ないから。

「……王妃アニータ……様。お願いします。クインだけは……助けてあげてください」

 彼女の射るような眼差しに、私は圧倒されてしまった。何故、彼女の瞳の中にあるものに、これまでに気が付かなかったんだろう。

 こんなにもわかりやすく、そこにあったのに。

「……クインのことは心配しなくて良いわ。聞いてはいたけど、本当に可愛らしくて……幼い頃のフィリップにそっくりね。私がこれから、すべての面倒を見るから心配しなくて良いわ」

「え! なんのこと? ……姉上!」

 驚いたクインは慌てて立ち上がり、私のそばに駆け寄ろうとしたけれど、近くの女性に捕えられた。ああ。あの特徴のない顔をしたあの人だ。

 ここに着いて居なくなったと思ったら、ここに居たのね。

「連れて行ってちょうだい。あまり、良い話でもないから」

 王妃アニータは軽く片手を振って、暴れて騒ぐクインは連れて行かれてしまった。