けれど、私の見たものは、まるでそれとは正反対で……。

「あっ……姉上? 来たんだ」

 そこに居たクインは縛られてなんか、なかった。

 むしろ、この子が大好きなお菓子が、机の上には大量に積み上げられていて……ケーキを頬張り、口の周りに白いクリームをつけているクインは可愛い。

 我が弟ながら、美術館の絵に描かれていてもおかしくないくらいに可愛い。

 お父様似の美形の男の子が、可愛らしいお菓子と一緒にあるなんて、本当に絵になる。

「……え? どういうことなの?」

 一週間、今の状況を忘れそうになったけど、どう考えても、クインは誘拐されているようになんて見えない。

 むしろ、歓迎されている……誰かに。

「え? 王妃様の使いから姉上が会いたがっているからと、ここへ来るようにと言われたんだ。何度も邸でも見かけた人だったし……姉上、なんでそんなに驚いてるの?」

 そういえば、私はまだクインにはこれまでの詳しい経緯は伝えていなかった。

 彼にはもうすぐ会う予定があったし、直接話そうと思っていた。手紙で伝えるには、あまりにもショッキングな内容だったから。