普通なら姪とは違う女性に彼が興味を持ったと聞けば、すぐに遠ざけるものではないだろうか。

 それに、あの……私がギャレット様の婚約者となった原因の、大国の姫。確かに彼女は、ギャレット様がことのほかお気に入りの様子だった。

 けれど、私は……王妃様からしか、彼女が強引にギャレット様との縁談を推し進めようとしていたなんて、聞いたことがない。なんとなく、王族同士の内密の話なのかしらとも思っていたんだけど……今考えてみると、おかしいわよね。

 おかしなところばかりだ。

 私は医師に雇われているらしい女性の看護人が入って来たのを見て、軽く挨拶をした。

 彼女は何気なく私に近づき小さな白い紙を渡したので、私はなんだろうと反射的にそれを見た。

『今すぐに裏口にまで一人で来てください。これを誰かに教えれば、弟は殺します。証拠が欲しければ、体の一部を送ります』

 意味を頭で理解した瞬間、喉がヒュッと鳴ったような気がした。

 けれど、その手紙を渡した彼女はここに居て、扉の前にはイーサンの残した屈強な用心棒が二人隙なく周囲を見回して居た。