医師から説明を受けていたイーサンに話を聞き、私は今は眠ってしまったお父様の手を握った。

 大きな手は、とても冷たい。不健康そうな顔色だって、理由を知れば当たり前だ。お父様はこれまで、どれだけ辛い思いをして来たのだろう。

 どうして……いつからなの?

 段取り良く私と自分に付いて居た用心棒を残し、イーサンは急ぎ行ってしまった。クインを手中におさめた後、こうしてお父様が逃げ出したから、それを探している人が居るかも……もしかしたら、今なら犯人への手がかりが残っているのかもしれないと思ったのだろう。

 医師の診断を待っている間に、イーサンに順を追って話を聞いてもらうと、お父様は誰かに罠に嵌められた可能性は大きそうだった。

 とはいえ、私だって両親の交友関係に明るいとは言えない。

 幼い頃に祖父母が事故で亡くなり、私が社交界デビューして直後に母は亡くなった。夜会になんて参加するなんて、夢のまた夢で。それからは、本当に怒濤の日々だった。

 王妃様は今考えると、私がギャレット様に好意を持たれてしまったかもしれないと言った時も取り合わなかった。