綺麗な顔だけで何も出来ない人なんだって、けれど息子のクインが居なくなって……だから、こうして必死で逃げてくれたんだ。

 今までのすべて、お父様のせいだって思ってた。けれど、それも……全部、何もかも誤解だったのかもしれない。

「良いか。ローレン。これからは慎重に動くんだ……犯人は最後の仕上げをするつもりだぞ。君の家族は利用されたんだ。弟の命を救うために、行動に細心の注意を払え」


 イーサンは走る馬車の中、まるで犯人に聞こえては大変だと言わんばかりに声を潜めた。

 それが冗談になんてならないくらいに、今私が居るのは深刻な事態であるのは間違いなさそうだった。