「……生意気を言うようになりやがって。さっさと行け。俺みたいな良い男を逃したことを後悔してこい」

 ベッドに座っていたままの私は、促されて立ち上がって、イーサンと向かい合った。

「ありがとう。イーサン。感謝してる。忘れないわ……もし、私がギャレット様を救うことが出来たら、貴方の願い事をなんでもひとつだけ叶えると約束する。私の出来る範囲で、だけど」

「これだから、世間知らずのお嬢様は。なんでも叶えるなんて、これから絶対に口にするな。さっさと行け……俺に良い女を逃したと思わせてくれ」

「ありがとう! イーサン!」

 私が邸の中を走っているのを見て、使用人たちは驚いているようだ。泣いて引きこもっているはずの女が廊下を爆走していたら、それは驚くと思う。

 本当にごめんなさい。

 仕事の出来るイーサンは、馬車を玄関に付けてくれていた。先読みの出来る良い男。それは、確かにそうなのかも。

 私はそれに飛び乗って、何度か息をついて、胸の前で両手を握り祈った。

 ギャレット様。どうか、何事もなく無事で居て。