「でも勝つときは……おもいっきり勝つ」
もう少しできた、まだできた。
そんなふうに後悔しない勝利を得たい。
「行けると思うか?とは、俺も聞かない」
そこで静かな口調で放ったのは監督。
この監督だけは、前もって俺が本心を伝えたときも真剣に聞いてくれた。
俺たちの勝負は夏だと、八木坂のレベルじゃ春は無理だと言った俺に「バカ野郎。俺はお前らを信じてんだよ」と、笑った監督。
「今の友利の話を聞いて、もちろん不安もあるだろう。いま以上にキツい練習メニューが待ってるのかと憂鬱にもなるだろう」
空から雪が降ってくる。
これは雪虫じゃなく、本物の雪だぞ彗。
「ただ、そういった感情すべて抜いて考えたとき。純粋に“このチームで甲子園に行ってみたい”と、少しでも、一瞬でも思った奴は手を挙げろ。それだけでいい」
夕暮れ空をぎこちなく掴むように手を挙げた、───見事に全員。
「ここ数年、初出場の高校も多いみたいだぞ」
明日からもっと厳しくさせてもらうからな、と伝わってくる監督の強い眼差しに、部員一同はうなずいた───。



