「頼む。とくに今日は……彗に見守ってて欲しいんだ」
「……わかった」
「…よし。いけそうだわ俺」
まるで敵陣にたったひとりで向かいゆく侍みたいな言い方をしてくる。
遠く離れた場所に妻が見守っていてくれさえすれば、自分は大丈夫だと。
………は?妻?
「なんか具合わるくなった……」
「は?気分わるい?あ、酔い止め持ってるかも。ちょい待ってて!」
教室に戻って行ったと思えば、わりとすぐ。
再び駆け寄ってきた野球部に差し出された、飴タイプの酔い止め薬。
「遠征とかあって、しょっちゅう俺も舐めてんの。グレープ味、うまいよ」
「………じゃあ、いっこ」
「ん」
別に酔ってないんだけど。
でも飴は特別感があるから、受け取っておいた。
それからカラコロと舐めながら受けた5限目、なぜか友利と目が合う頻度が多かった。
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