《9回裏、いよいよ最後の攻撃となりました。7-5、ツーアウトランナー2塁3塁。このチャンスを形にできるか八木坂高校。
繋ぐか、サヨナラ逆転か、それともここで夏を閉じるか。70年ぶりとなる甲子園への切符が懸かっています》
《相手は春のセンバツでもベスト4に入った強豪、若戸学園ですらねえ~。若戸の壁はなかなか手強いんじゃないでしょうか》
《ただ彼は今大会で3安打1四球。打率は4割を超えています。さあ打てるか背番号2、キャッチャー友利くん》
たらりと、汗が垂れる。
ごくりと、息を飲む。
ぎゅっと、手に汗を握る。
大歓声のなか、私が座った席だけが沈んでいるようだった。
高校名を表すアルファベットがフォントされたヘルメット。
土だらけのユニフォーム、焼けた肌。
バットを握るバッティンググローブ、背負った2番。
同じように見えて彼だと分かるフォーム。
あれが────友利 洸大。
『あのー、悪いんすけど…』
今なら言えるよ、友利。
あのとき、嫌でも足を止めて良かったって。



