「……ともり、」
なにか戦略があるんでしょ…?
ベンチには下げなかったということは。
友利、きっと何か考えがあるんだよね。
───何かが、起こる気がする。
そんな胸騒ぎから目覚めた朝、今もそれは変わっていなかった。
『交通費はあるのか』
木がしゃべった、と。
皮肉は心のなかに留めた。
前々から今日という日は野球の応援に行くと伝えてあったから、伯母も伯父も了承済みだった。
むしろ私がいないほうが気楽だろうって、玄関を出ようとしたとき。
初めてじゃないかと考え込んだほど、伯父から声をかけてきて。
『…え、』
『交通費、足りるのか。会場は遠いんじゃないのか』
『……いや…、一応は、バスで乗り換えたりして…なんとか行ける範囲、です』
『…そうか』
そんな声をしていたんだ。
なんだ、ちゃんと喋れるんだ。
思わずタジタジで答えた私に、伯父は変わったことを続けた。
差し出してきたのは、折り畳まれた1万円札。



