夢を見ているみたいだった。
夢のなかにいるんじゃないかと、思った。
ここまでの大観衆に囲まれたことが無かったからか、それとも本当に今日が決戦の日なんだとようやく実感したからか。
「あつい…」
自分にだけ当たっているんじゃないかと、恨みたくなるくらいの太陽。
それぞれに飾られた横断幕。
一眼レフカメラを手にしては、最前列で写真を取る人間。
その付近に座っているのは、メモとペンを手にした中学生ほどの男の子だろうか。
未来の高校球児の勉強会。
八木坂高校側に座っているはずが、1点1点の盛り上がりの拍手にさえ、わかりやすい差があった。
そりゃそうだ。
無名高校が決勝にまで来ているんだから。
「すまないねえ。わしは耳も目も遠くてな」
そう言いながらも独り言にしか聞こえなかった。
隣に座った老人にとって、2階席は優しくないのかもしれない。
ラジオ中継を流しながらの観戦……だと。
なかなか新しいことをしている。



